【column】防犯その3:狙われにくい家にするコツ

2025.10.23 | 防災・防犯・環境

生活者にとって怖いものの一つは、いわゆる「空き巣」などと呼ばれる住宅侵入盗。家の中にある大事な財産を奪われてしまい、時には家主や家族が危険な目に遭うおそれも。招かざる相手の侵入をできるだけ防ぎ、盗難被害から自分たちの身と財産を守るには、いったいどうすればよいのでしょうか。

日本防犯設備士協会認定の総合防犯設備士である藤滿弘さんが教えてくれたのは、建物の開口部(扉・窓)、庭や外構部などを見直して「鉄壁の守り」を固めること。そうすることで、侵入をあきらめさせ、狙われにくい住まいにできるそうです。

建物の開口部を強化する

防犯のプロである藤滿さんは「扉や窓といった家の開口部をしっかりと強化する。これがまず重要です」と指摘します。「防犯その2」の一部でも触れましたが、「侵入のための作業に手間と時間がかかる」ように、補助錠や性能強化部材などで補強しましょう。

「5分以上の時間がかかってしまうと、たいていは犯行をあきらめます」たとえば戸建ての場合、ポイントとなるのは、以下の場所です。

・玄関扉
・窓
・勝手口


▲侵入盗の出入口となりやすい窓は「シャッター」や「面格子」でガードする。

それに加えて、大事な物を置いてある部屋のドアにも鍵を取り付けるとよいでしょう。侵入盗対策として「室内ドア」は見落とされがちですが、たとえ家の中に侵入されたとしても貴重な財産を守れる可能性がアップしますし、自分の身を守る際の「盾」にもなります。

「玄関扉や窓などには、防犯性能試験によって防犯性能が高いと認められた『CP対応商品』があります。これらは、侵入手口による攻撃を5分以上防ぐ性能を有しています。たとえば、CP対応玄関扉の場合、ドリル、金切りバサミ対策が施されているといった特長があります」

侵入経路をつくらない

「不審者が家へ侵入するための経路をつくらないのも大事です。戸建ての場合は、2階から侵入するためのアプローチとならないよう、侵入の足場となりそうな箇所を改善しましょう」

玄関扉や1階の窓といった開口部は万全でも、2階の窓や扉は警戒が手薄になりがち。2階への侵入の足場となるおそれがあるのは、以下の場所です。

・エアコン室外機
・建物外壁に露出した配管
・出窓
・駐車場の屋根
・フェンス・塀
・物置

物置やフェンスの室外機など、位置の変更が可能なものは、足場とならない配置を検討しましょう。また、はしごや脚立など足場として使える物を目に付く場所に放置しないのも、重要なポイントです。

「足場となりそうな物の配置を変えられない場合でも、『室外機の上に植木鉢を並べておく』といった工夫が有効です。邪魔な物を一つずつどかしていくという面倒な手間が、侵入盗をあきらめさせるのに役立ちます」

見通しをよくする

「家の敷地内に人が隠れやすい場所があると侵入盗につけこまれやすいので、なるべく見通しがよくなるようにしてください」

家の中の住民からだけでなく、通行人からも「誰かいる」と気づけるような見通しがポイント。戸建ての場合、侵入者が身を隠すのに用いやすいのは、以下の場所です。

・見通しの悪い塀
・生い茂った生け垣
・駐車場に置かれた車の傍
・暗い玄関
・暗い庭

植栽の整理、フェンスやバルコニー柵の取り換え、センサー付き照明の設置などが改善対策として有効です。

「また、道路と敷地の間の境界線を明確にしておくのも効果があります。境界線があいまいだと、私有地である敷地内に他人が足を踏み入れることへの抵抗が少なくなってしまうからです。境界線が誰の目にも明確だと、不審者を見分けやすくなります」

境界を示すためにフェンスを設置できなくても、「チェーンで仕切る」、「パイロン(三角コーン)を置く」といった方法でも境界をはっきりさせられます。

○セキュリティーホームのポイント

集合住宅の防犯ポイントについては、「防犯その5」をご覧ください。

次の「防犯その4」では、玄関や窓に取り付けると効果的な部材や防犯グッズを紹介します。

取材ライターのつぶやき

家の建物の傍らに置かれているエアコンの室外機や物置。家人にも通行人にも何の違和感もない光景に見えますから、これらが侵入盗の手助けをすることがあるなんて、思いも寄らない人は多いのではないでしょうか。扉や窓の防犯性を高め、侵入時の足場や不審者が隠れる場をなくすには、家の設計段階から配慮するのが一番でしょう。家の新築時、リフォーム時は、防犯対策を考える絶好の機会といえますね。

今回のSpecialist 公益社団法人日本防犯設備士協会認定 総合防犯設備士
藤滿 弘(ふじみつ ひろむ) さん

特定非営利活動法人福岡県防犯設備士協会事務局長。
総合防犯設備士の資格のほか、福岡県警察と特定非営利活動法人福岡県防犯設備士協会が委託する「防犯設備アドバイザー」の資格を保有。「安全・安心なまちづくり」を目指し、講演、テレビ出演、防犯診断、防犯設備の設置指導等を通じて、生活者の防犯意識向上のための活動をおこなっている。


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