「備えあれば憂いなし」と言いますが、こちらが備えているつもりでも思わぬ事態を引き起こすのが自然災害です。それでも、普段から災害時を想定して、できるかぎり備えておく心がけが大事。
そして、災害は思わぬ時にやってくるもの。自宅にいる時に起きるとはかぎらないし、家族と一緒の時ともかぎりません。自宅、会社、学校など、それぞれが別の場所にいる時に災害に遭遇したら、家族といち早く再会するには、どうすればよいのでしょう。日本防災士機構認定の防災士である古賀由布子さんに、事前準備のポイントを教えてもらいました。
家族のスケジュールを把握する
自然災害のなかでも、大雨や台風の場合はある程度事前に時期や場所の情報を得ることができますから、災害に遭いそうな日のスケジュールを家族間で共有しておくと、いざという時に別々の場所にいても相手の居場所を把握しやすくなります。「できれば、その日の家族全員のタイムスケジュールと居場所をこまかく書き出してみるといいでしょう」と、古賀さんは教えてくれました。
「たとえば、お子さんの部活の時間帯に大雨になりそうなら、部活は休んで帰宅するよう指示するとか、少し離れた場所に住んでいる高齢の親を迎えに行き、一緒にいるようにするとか。事前にお互いの居場所を把握しておけば、心配ごとを減らせるはずです」
お子さんが児童の場合は、ハザードマップを囲んで、災害時の避難経路を一緒に確認しておくのも、いざという時のためにやっておいたほうがよいかもしれません。

集合場所を確認しておく
家族と別の場所で災害が起きる可能性を考えて、事前に集合場所を確認しておくと、お互いの安否をいち早く確かめるのに役立ちます。
災害時の避難場所には、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」があります。

「指定緊急避難場所」は、災害による危険から命を守るために緊急避難する場所のことで、小中学校のグラウンドや体育館、校舎の2階以上の場所などが市区町村などによって指定されています。
そして、「指定避難所」は、災害で自宅へ戻れなくなった人たちが一時的に滞在する場所です。小中学校の体育館、公民館などが指定避難所となり、管轄の行政機関が安全を確認した後に開設されます。
指定避難所は、支援物資や情報などが集まる場となり、場合によっては給水拠点、救難所も設置されます。
「自分のいる所によっては、指定の避難場所までの距離が遠いケースもあるでしょう。そういう時は無理をして避難場所を目指すより、早めにたどり着ける安全な所へ向かうのをお勧めします。また、避難すべき場所は災害の種類によっても異なります。水害であれば川や橋に近い所は避けるべきですし、地震であれば電柱が密集しているような場所になるべく足を踏み入れないようにすべきです」

連絡方法を決めておく
災害時に別の場所にいる家族の所在や安否をいち早く確認するために、連絡方法についてもあらかじめ話し合っておきたいものです。
電話で連絡を取り合うのが手っ取り早い方法と言えるでしょうが、災害時には、大勢がいっせいに利用するため電話がつながりにくい状況に陥りがち。そのような事態になった場合、各通信事業者では、「災害用伝言ダイヤル」などのサービスを開始します。
たとえば、NTT東日本・西日本では『災害用伝言ダイヤル(171)』として、声の伝言板サービスを提供しています。震度6弱以上の地震発生時には、その事実が伝わってから30分ほどで提供が開始され、震度5強以下の地震やその他の災害発生時は、電話の通信状況に応じて提供が判断されます。

「『災害用伝言ダイヤル(171)』では、伝言の録音と再生がおこなえます。また、災害発生に備えて利用方法を事前に覚える目的で、毎月1日・15日、正月3が日などに『体験利用』の機会が設けられています。家族や親族間、友人どうしで体験おくといいでしょう」
電話以外の連絡手段についても、古賀さんは教えてくれました。
「災害時の携帯電話のつながりにくさにくらべれば、LINEはつながるほうだという声を聞きます。一方で、タイムラグが発生するという意見も。
アナログなやり方ですが、家の玄関などにメモや付せんを貼って家族にメッセージを伝えるのも、緊急時には効果があるようです。ただし、個人情報が他人に漏れたり、留守宅であると知られたりと、防犯上の課題もあるので、書き記す内容とメッセージを貼る場所などへの配慮が必要になります」
取材ライターのつぶやき
「災害時の備えとして、もしも時の集合場所や連絡方法を家族で決めておく」のは、そう言われたら確かに、と思う半面、言われなければ思いもよらないことでした。今回の取材も、よい気づきとなりました。家族がお互いのことを考えながら「一致団結」するのに、絶好の話題かもしれません。
今回のSpecialist
日本防災士機構認定防災士
古賀由布子(こが ゆうこ) さん

日本防災士機構認定防災士。
「Say!輪(セイリング)」代表。「人と人との輪を紡ぐ」というテーマのもと、学び合いの場づくりを目的として2012年に任意団体「Say!輪」を設立。現在の活動の中心は、『わかりやすく楽しい防災ワークショップ』。防災ワークショップでは、防災をきっかけに老若男女、多種多様な人々が相互理解を深める場を育むとともに、防災意識の啓発活動だけに留まらない、さまざまな地域課題解消のお手伝いにも取り組んでいます。
webサイトhttps://sayring.wixsite.com/2012

