【column】災害に関する情報の取り方

2025.06.19 | 防災・防犯・環境

「備えあれば憂いなし」と言いますが、こちらが備えているつもりでも思わぬ事態を引き起こすのが自然災害です。それでも、普段から災害時を想定して、できるかぎり備えておく心がけが大事。

そしてまず、備えの手始めに手に入れておきたいのが、自然災害が発生した時、自らの命をつなぐのに大いに役立てられる、生活する地域の危険度に関する情報、および被災地の状況などを伝える情報です。日本防災士機構認定の防災士である古賀由布子さんに、情報収集のポイントを教えてもらいました。

まずは、ハザードマップで生活圏を確認

日頃からの備えとして、まず目を通しておきたいのが、自分自身の生活圏が載っている「ハザードマップ」です。ハザードマップとは、自然災害に伴う河川のはん濫や堤防の決壊、土砂災害、津波による浸水といった被害を、地形などをもとに予測して、被害範囲を地域ごとの地図に落とし込んだもの。
また、被災想定区域のほかに、地域ごとの避難場所や避難経路についても知ることができます。

「地域の町内会に入っている家庭には、配布されていると思いますが、手もとにない場合でも、区役所や市役所、市民センターなどの公共施設でもらえますし、行政機関のホームページでダウンロードできます」と古賀さん。

ハザードマップで自分の生活圏を確認して避難所や避難経路を把握し、家族で情報を共有しておくと、いざという時に落ち着いて行動するのに役立ちます。


避難経路の確認をする家族

「ただし、ハザードマップで被災想定区域になっていない場所が、必ずしも安全というわけではありません。たとえば、交通量の多いアンダーパス(立体交差で鉄道や道路の下をくぐる道で、大雨などで冠水しやすい)などは被災想定区域として表示されていても、水の溜まりやすい小さな道などはマップに反映されていないケースも。それでも、目安にはなりますので、もしもの時に使える、通学路とは違う道などをあらかじめ知っておくだけでも、危険を回避しやすくなります」

災害時には携帯などで常に最新情報を

では、実際に災害が発生したら、どのように情報を得るのがよいのでしょうか。被災地、さらには被災の危険が高まっている地域の状況は刻々と変化していきます。避難場所へ向かわなければならない場合であれば、携帯ラジオや携帯電話などを使って、最新の情報を入手するのがよいでしょう。

「気象庁では、『キキクル』という情報ページを設けて、洪水警報などが発表された際、実際にどこで危険が高まっているかを確認できるようにしています。また、自分自身の生活圏の情報をより迅速に見つけやすいという点では、自分のいる場所を管轄する行政機関が発する情報が有効です。

「市町村といった行政機関ごとに提供している防災アプリなどのサービスは、自身の住む地域の危険度情報を得る手段としてだけでなく、遠隔地の状況を詳細に把握するのにも役立てられます。離れた地域に暮らすご高齢の親族に連絡して早めの避難を促す、といった具合に、見守りツールとして活用できます」

国や各地の行政機関による情報提供のほか、災害時には「速報性」のある情報としてSNSが利用されるケースが、近年ではよく見られるようになっています。災害時、当事者は不安になっているせいで、つい目先の情報を鵜呑みにしてしまいがちですが、SNSなどで個人が発する情報には、いわゆる「デマ」、意図的な誤情報が含まれているおそれも。

「発信者が個人の場合、たとえ善意からの情報発信であったとしても、内容が正しいとはかぎりません。確かなデータを根拠とするものではなく、発信者個人の経験が生んだ推測だけで発信しているかもしれないのです。命に関わることですから、公共機関など、信頼性の高い発信源の情報にもとづいて行動するよう心がけてください」

緊急性の高い防災無線情報

山間の集落や海岸部といった地域で比較的多く見うけられる「防災無線」の街頭スピーカー。これも災害時には、有効な情報入手手段となります。

「一方で、豪雨災害などの場合は雨の音で聞き取りにくくなり、高齢者の多い地域では、聴力の衰えから各家庭に届きにくいという弱点があります。実際に、平成28年熊本地震では、防災無線のある地域の住民の過半数が放送を聞いていなかった、という総務省の調査結果がありました」

とはいえ、防災無線の情報は地域住民にとって、まさに今自分たちのいる場所に関するピンポイントな情報である場合が多く、災害時には緊急性の高い重要な情報といえます。

「スピーカーを取り付けた車両で地域を巡回しながら呼びかけるケースもあります。そのような車両を見かけたら、わが身にも危険が迫っていると考えて行動してください」

取材ライターのつぶやき

自然災害に対する備えの第一歩としてハザードマップの確認が重要であると、取材を通じて知り、自らの生活圏をすぐチェック。住まいは洪水浸水の危険がある地域となっており、たしかに平成30年7月の「西日本豪雨」では床下浸水しました(地域では六十数年ぶりとのこと)。「備え」といえば、これまでは「防災袋」を思い浮かべるぐらいでしたが、考えをあらためる良いきっかけになりました。

今回のSpecialist 日本防災士機構認定防災士
古賀由布子(こが ゆうこ) さん

日本防災士機構認定防災士。
「Say!輪(セイリング)」代表。「人と人との輪を紡ぐ」というテーマのもと、学び合いの場づくりを目的として2012年に任意団体「Say!輪」を設立。現在の活動の中心は、『わかりやすく楽しい防災ワークショップ』。防災ワークショップでは、防災をきっかけに老若男女、多種多様な人々が相互理解を深める場を育むとともに、防災意識の啓発活動だけに留まらない、さまざまな地域課題解消のお手伝いにも取り組んでいます。


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