【column】照明でおうちをセンスアップ|照明の基礎知識編

2024.12.19 | 照明

照明は部屋を明るくするだけでなく、温もりやくつろぎ感をプラスするのに欠かせないもの。同じ間取りとインテリアでも、照明の選び方ひとつで大きく印象が変わるんです。そこでフリーのインテリアコーディネーターとして住宅の照明・インテリアを手がける菅昌子さんに「おうちをセンスアップする照明」について聞いてきました。
まず第1回目は、「知っておきたい、照明の基礎知識編」です!

部屋に必要な明るさとは


まず、それぞれの部屋に必要な明るさとはどれくらいなのでしょう。社団法人日本照明工業会からは10畳の部屋でおよそ3900~4899ルーメン、1畳あたり約40wという目安が示されています。「一方、それぞれの部屋に必要な照明の明るさは、ワット数や照度という基準だけではなく、壁や床、天井の仕上げ材や色などによっても変わります」と菅さん。例えば、光を反射しやすい白い壁と、光を吸収する黒い壁では照明の効果が変わってくるのだといいます。

では、上手に明るさを確保するコツはあるのでしょうか。

「ポイントは、調光ができる照明器具を選ぶことと、さまざまな照明で明るさを足していく多灯照明にすること。時間帯やシチュエーションに合わせて照明を使い分ければ、部屋の雰囲気が大きく変わります」

明るさを考える上では、家族構成を考えることもポイント。高齢者は若い世代に比べて、20%程度暗く感じるといわれているそうです。「高齢者がいるご家庭や、今後高齢者になる世代は少し明るめの照明にして、調光によって明るさを調整できるようにするといいです」と教えてくれました。

色温度でオン・オフを演出

電球を買い足したら、照明の色がちぐはぐになってしまったことがありませんか?
その色にあたるものがK(ケルビン)という単位で示される色温度です。

「大きく分けて、電球色、温白色、昼白色、昼光色という4色があります。同じ空間の照明全体をひとつの色温度で揃えると、すっきりした印象になります。電球色にも昼白色にもなじみやすい、温白色で統一することをおすすめしますが、照明は白っぽい色がいいという方もいるので、好みに合わせて選ぶのが良いと思います」と菅さん。

一般的に、事務作業や勉強をするシーンでは、青っぽい昼光色の照明が適しているといわれているそう。「全体の照明をひとつの色温度で統一したとしても、局所照明には使用シーンにふさわしい色温度のものを使う方がいいでしょう。例えば、リビングルームの一角にあるデスクには、昼光色のデスクスタンドを置いて、勉強や仕事をするときだけ点灯。食事の時に使うダイニングテーブル上のペンダント照明は、温かみのある電球色にするといった使い方です。ダイニングテーブルの上は、高演色タイプのものにするとなお良いですね」

自然な色を再現する演色性

「演色性とは、自然光で見る時の色により近い色を見せてくれること。文字だけを見ると、色を演出すること・作り出すことと勘違いしてしまいそうですが、演色性が高い照明の光は、自然光に近いということです。Ra(平均演色評価数)という単位で表し、照明でいうと白熱灯がRa100にあたります」

料理をおいしそうに見せるためには、ダイニングテーブルの上に演色性の高い照明を設置しておくと良いそう。「白熱灯は電力に対する変換効率が悪く、熱くなりやすいというデメリットもあります。蛍光灯やLEDの高演色ランプ(Ra80以上)を使用することもおすすめです」。

多灯使いでくつろぎの空間を

多灯照明とは、部屋の全体的な照明と、手元など必要な場所を照らす照明を設置すること。「タスク(局所)&アンビエント(全体)で、お部屋に複数の照明を配置。シーリングライトとダウンライトなどを天井の全体照明にして、フロアスタンドやテーブルライト、スポットライトなどを部分的に取り入れます。設計段階で照明を設置する建築化照明、間接照明を採用するのもいいですね」と菅さん。作業を行うための明るさを確保し、くつろぎの空間を演出するためにも、多灯使いは必須です。

「『電気をたくさん使うので、エコではないのでは?』と思われるかもしれませんが、それも工夫次第です。全ての照明を毎日最大の明るさで点灯させて使えば電気消費量がアップするでしょうが、調光機能を使ったり、読書やスマホを使う時には全体的な照明は明るさを絞って、手元を明るく照らしたりする工夫をするといいですよ」

どこに光を当てるか、演出の視点を

照明を効果的に使うためには、部屋のどこに光を当てるかという視点が大切。
「生活していて、天井ばかりを見上げている事はあまりありません。むしろ座っていても立っていても、壁面がよく目に入るはずです。壁面を照らして横方向の広がりを強調することで、部屋は明るく感じられます」と、菅さん。

寝室などを重厚感のある雰囲気にしたいのであれば、全体照明を控えめにして壁面と床面を照らすなど、光を意識して使うことでイメージが変わってきます。

取材ライターのつぶやき

漠然と「素敵なインテリアだなあ」と眺めていた写真も、照明に注目するとどれも多灯使いのものばかりで驚きました。壁紙の色や間取りによっても照明効果は変わるので、トータルで考えることが大切なのですね。日常のシーンでも在宅勤務の増加や子どものリビング学習ブームなどで、自宅の使い方もよりフレキシブルになっていると感じる現在、シーンに合わせて照明を変えていくという発想はぜひ取り入れていきたいと思います!

今回のSpecialist インテリアコーディネートHYGGE(ヒュッゲ)
菅 昌子(すが しょうこ) さん

「本当に住みたい部屋 もっとあなたらしい部屋へ」をコンセプトに、フリーランスのインテリアコーディネーターとして個人邸の新築とリフォーム、模様替えを手がける。
メディア取材や専門家としての記事監修も行っている。
公益社団法人インテリア産業協会 インテリアコーディネーター
一般社団法人 日本ライティングコーディネート協会 ライティングコーディネーター


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